Dobrý den, Jak se máte?
8月からブログを担当しております、ちひろです。
今月も「チェコの文化を守る日本人とゆかりの地」について、お送りいたします。
 
※以下は私自身の体感も含まれており、事実とは必ずしも一致しない可能性がありますが、ご了承ください。チェコに渡航される際の参考にしていただければ幸いです。


【チェコの人形劇】

皆さんは人形劇というとどんなものを思い浮かべますか?
私は日本の人形劇というと、「教育番組に少し出てきたかな」といったイメージがありますが、これといった印象的な皆が知っているキャラクターなどはいない気がします。チェコでは人形劇というと、ほとんどの方がHurvínekを思い浮かべるはずです。私の記憶に残っている初めての人形劇はDejvická(デイヴィツカー、プラハ6区)にある「Divadlo Spejbla a Hurvínka」で観たマリオネットの人形劇で、この劇場は国民的な人形劇場です。
プラハの中心地を歩くと市場にもおもちゃ屋にもマリオネットが売られており、チェコのテレビ局「Česká televize」でも過去にマリオネットを用いたアニメが放送されています。
 
Hrvínekとその仲間たちの絵
(私が描いたので実際と異なる部分があるかもしれません笑)
 
そのくらいチェコでは人形劇は馴染みのある一方で、周囲で人形劇を観に行ったという大人は観光客と地元の方を含め、ほとんど見かけません。実際に劇場に足を運んでも席はほぼ現地の子どもで埋められています。
今回私が人形劇にフォーカスをしたのは、前回同様、よりたくさんの人にもっと人形劇に興味を持ってほしいと思ったからです。そこで今回は人形劇を切り口に、人形師の沢則行さんにいくつか質問をさせていただき書面で回答をいただきました。
 

【沢則行さんに4つの質問】

沢則行さん
写真:Youhei KUBOTA
 

【プロフィール】沢 則行(サワ・ノリユキ)

北海道小樽市出身。1991年にフランス、1992年に文化庁在外研修派遣でチェコへ。
以後、プラハを拠点に世界20ヶ国以上で公演、また、チェコ国立芸術アカデミー演劇・
人形劇学部を始め、多くの教育現場で講座、ワークショップを行う。
ヨーロッパ文化賞「フランツ・カフカ・メダル」授与、EU 文化都市賞など、国際的受賞多数。
日本国内では、NHK「みんなのうた」映像制作、「SWITCHインタビュー達人達」出演、
東京オリンピック・パラリンピックの公式文化プログラム「東京2020NIPPONフェスティバル
~巨大人形プロジェクト『モッコ』」の人形デザイン設計および人形製作操演総指揮を担う。
2023年は野田秀樹作・演出「NODA・MAP~兎、波を走る」で人形担当。
また2025年までの3ヶ年計画で台湾での巨大人形劇を監督中。
極小から巨大まで、あらゆる人形(=フィギュア)を創造し操演するところから、
フィギュアアートシアタの第一人者とされる。
 
facebookアカウント: https://www.facebook.com/norisawa1
instagramアカウント:norisawa01
 
 
東京オリンピック・パラリンピックの公式文化プログラム
「東京2020 NIPPONフェスティバル~巨大人形プロジェクト『モッコ』」の人形
 
ひとり芝居「KAGUYA- Bamboo Princess」
 
今回も、
【1.チェコの好きなところ】
【2.チェコで人形師を始められたきっかけ】
【3.チェコの人形劇の魅力】
【4.チェコに来る方に伝えたいこと】
の4つを沢さんにお聞きしました。
 

【1.チェコの好きなところ】

外出が苦手なのに、なぜか旅に出て仕事する時間が長いです笑
チェコの中でも、劇場や芝居の仲間しか知らないのですが、みんな本当に素敵なヤツらばかりです。
ちょっと暗い性格が特徴的ですが、いったん仕事をいっしょにすれば、彼らの底抜けの明るさ、素直さにどれほど助けられるか…
たとえば34年前、革命直後の混乱したこの国に来て、彼らだって自分たちのことで精いっぱいのはずなのに、とてもとても良くしてくれた芸術アカデミーDAMU(Karlova 26, Praha 1)、Hradec Královéの劇団ドラック(Divadlo DRAK)のメンバにものすごくお世話になった経験は、一生忘れられないと思います。
気候や食べ物もどこか生まれ育った北海道に似ていて(冬に食べるじゃがいもがメッチャ旨い)、気が楽です(^^♪
 

【2.チェコで人形師を始められたきっかけ】  

 1991年にフランス国立の人形劇芸術学院でワークショップに参加して、そのときの教授だったチェコのJosef Krofta(人形劇監督)にプラハへ来ないかと誘ってもらったのがキッカケです。
最初はDAMU(チェコ国立芸術アカデミー演劇・人形劇学部)で学生していたのですが、ヨセフの国際プロジェクトに役者として使ってもらったのがプロデヴューでした。
 

【3.チェコの人形劇の魅力】  

 人形も人間の役者も、照明や音楽でさえ、舞台上のドラマを作りあげるために等価であって、自由に混ぜ合わせてよい、という基本思想がすごいと思います。
ただこの手法はよく練り上げられた脚本と演出、何でもこなせる役者の演技力、そしてものすごいヒラメキが必要で、自由なメソッドでありながら求められるレベルがかなり高度だと思います。
 

【4.チェコに来る方に伝えたいこと】 

 この30年余りでめざましい発展を遂げた中央ヨーロッパの国です。
沢は人形劇や舞台関係の知識しかありませんが、それらの分野はピカイチだと思います。
物価も今の日本と同じか、モノによっては日本よりも高額です。
気合い入れて準備して訪れてください笑
 
 

【インタビューを終えて】

【3.チェコ人形劇の魅力】の「自由に混ぜ合わせてよい」という考え方は、日本でテレビ越しに見ているパペットにはない、チェコの人形劇ならではのものではないでしょうか。
人形劇の専門知識はない私ですが、2018年にプラハ国立マリオネット劇場で「Don Giovanni」を観た際に、水や紙が客席まで飛び観客のリアクションも含めてパフォーマンスが作り上げられている様子に感動しました。

【4.チェコに来る方に伝えたいこと】に関して、沢さんのおっしゃる通り、チェコは今年の1月に私が来た時にタイムスリップでもしたかと思うほどの「めざましい発展」を遂げていました。それは都市の様子だけでなく、人間性などにもはっきり表れているように思います。

チェコにはčerný humor (ブラックユーモア)という文化がありますが、これが沢さんのおっしゃる、暗さと明るさを持ち合わせているチェコ人の人間性をよく表しているものかと思います。人形劇をはじめとするチェコの様々な作品に、このčerný humorが織り込まれているので、興味を持たれた方はぜひ実際に観て感じていただけたらと思います。
 

【ゆかりの地】

今回は沢さんが34年前チェコに来られた際に「とても良くしてくれた」と話された、DAMUを切り口に紹介します。
DAMUは大学の学部なので、授業を受けるのは学生に限られてしまうかもしれませんが、学部内に劇場を持っており、そこにはどなたでも行くことができます。
 

【Divadlo DISK】

1999年から続いているDAMUの演劇学部で運営されている劇場です。
ホームページによると、人形劇学科の学生もここで自分たちのプロジェクトを発表しているそうです。
 大学とは言えど、観光地の中にあるため、かなり足を運びやすくなっています。
 
Divadlo DISKの内観(2025年3月)
 
Divadlo DISKの内観(2025年3月)
住所:Karlova 26, 116 65 Praha 1
 

【おわりに】

多くの日本人にとって、大学に人形劇学部という学部が存在すること自体、びっくりすることではないでしょうか。私が日本で大学に進学する際には、なんとなく流れで進路を決めてしまったため(それが結果的に満足のいく選択だったとしても)、もっとたくさんの大学や学部があることを知って、選択の幅を広げればより良かったなと思います。
「人形劇を観ることを目的にチェコに旅行に来た」という方を増やすことも私の願いですが、今回の聞き取りを終え、「チェコでの観光がきっかけで、自分の選択肢を広げることができた」という方が増えたら嬉しいと思いました。
 ではまた来月、Ahoj!
 
【参考文献】  

執筆者紹介


ちひろ
改めまして、ちひろと申します。
私は幼少期の約5年をチェコのプラハで過ごしました。
約3年の社会人経験の後、将来的に日本とチェコに関する仕事をすることを目標に
現在はプラハでチェコ語を学んでいます。