チェコにはユダヤ人コミュニティゆかりの地が数多くあり、ボヘミア、モラヴィア、シレジアの各地に散在しています。その中にはユネスコ世界遺産に登録されているもの、美しいシナゴーグも含まれており、また人知れずひっそりと佇むユダヤ人墓地も百カ所以上あります。ここではフランツ・カフカ、ジークムント・フロイトの生家などもご紹介しつつ、貴方をユダヤの軌跡を辿る旅にいざないます。旅の途中ではラビ・レ―ヴあるいは伝説のゴレムなどに、ひょっこり出会えるかもしれません。
カフカと伝説のゴレムの軌跡を追って
神秘的なプラハ・ユダヤ人街は、町の中心部に位置し、旧市街の一部を形成しています。ここは、世界的にも最も貴重な数々のユダヤ史跡を有する珠玉の場所。こうした史跡の一つとしてまず挙げられるのが、13世紀末に建てられた、現存するものとしては欧州最古のシナゴーグ、旧新シナゴーグです。伝説では、このシナゴーグの屋根裏部屋にゴレムが葬られているとされています。プラハ・ユダヤ人地区は、世界的に有名な作家フランツ・カフカが住んでいた場所としても知られています。その生家は、旧市街広場のすぐ近くにあります。カフカの生涯に関して詳しく知りたいという方は是非、特別見学ツアーにご参加ください。また、マイゼル・シナゴーグ、スペイン・シナゴーグ、ピンカス・シナゴーグ、そしてクラウス・シナゴーグは、常設展示場としても機能しています。これらは全てユダヤ博物館に属していますが、この機関は、市内中心部にある旧ユダヤ人墓地を含むプラハのユダヤ史跡を、すでに100年以上に渡って維持・管理しています。
ユネスコ世界遺産、そして骨董屋も
ヴィソチナ地方の町、トシェビーチの聖プロコプのバシリカとユダヤ人街は、ユネスコ世界遺産に登録されており、エルサレム以外では、ユダヤ史跡として単独で登録されている唯一の世界遺産となっています。トシェビーチは、かつてモラヴィアのユダヤ文化の中心地だったところで、当時の姿のまま保存されているユダヤ人街とバシリカは、ユダヤ人とキリスト教徒の共存を物語るものとしても貴重な存在となっています。建物がびっしりと立ち並ぶユダヤ人街には、120軒のアパートのほか、市庁舎、学校、司祭館、救貧院などかつての公共施設の建物が残されています。新シナゴーグでは、ユダヤ人街の歴史に関する展示以外に、モラヴィア最古のシナゴーグ壁画装飾とされている、独特なバロック壁画もご覧いただけますので、ユダヤ地区ご見学の際には、是非忘れずにお立ち寄りください。またセリグマン・バウエルの家も非常に興味深く、その1階部分ではかつてユダヤ人の典型的職業とされていた骨董屋が、また2階では大戦間時代の、それほど裕福ではないユダヤ人一家の平均的な住居が再現されています。トシェビーチのユダヤ人街は今日、カフェやペンションなどが数多く立ち並ぶ町にあって、ひと際精彩に富んだ地区を形成しています。
フロイト精神分析学のルーツを探る
モラヴィア北部の町、プシーボルは、精神分析学の父、ジークムント・フロイトの生地として知られています。ユダヤ人の毛織物商人の家に生まれたフロイトがここに住んでいたのは、3歳までの幼児期に過ぎませんでしたが、この町で経験したことが後の生涯に大きな影響を与えています。市内に現存するフロイトの生家には、当時の内装が残されており、中に足を踏み入れると誰もが、幼いジークムントが母親の見守る中歩き、話すことを学んだ、そんな時代へのタイムスリップを体験することができます。
ユダヤ・カルチャー・フェスティバル案内
シャマイム - トシェビーチ・ユダヤ文化フェスティバル(2022年7月28~30日)コンサート、レクチャー、お子様向け(大人も楽しめる)イベントが満載。またフェスティバルの特別ユダヤ人街見学ツアーや、カーシェールの食べ物、飲み物のデグスタチオンもお楽しみいただけます。ホレショフ・ユダヤ文化フェスティバル「ハマコム」(2022年7月26~30日)モラヴィアの町・ホレショフのガイド付き市内観光、展覧会のほか、ユダヤ音楽をはじめとする様々な音楽のコンサートが開催されます。
ミクロフ・ユダヤ・カルチャーデー(2022年9月23~25日)ミクロフのユダヤ・フェスティバルでは、ユダヤ人とその文化の軌跡を辿ります。ここではユダヤ人墓地、シナゴーグ、ユダヤ人街の見学会のほか、ユダヤ料理の試食会、レクチャー、クレズマー音楽のコンサート、カーシェール・ワインの試飲会、ユダヤ・ダンスのパフォーマンスなどが行われます。
オロモウツ・ユダヤ・カルチャーデー(2022年10月)10月にオロモウツで開催されるユダヤ・カルチャーデー。展覧会、映画、コンサート、そして伝統料理などをお楽しみいただけます。