プラハで必見の展覧会9選
秋の訪れとともに、チェコは文化シーズンに突入します。プラハでは、国立美術館、国立博物館、プラハ市立博物館などが何ヵ月もかけて念入りに準備した数々の展覧会が開催されます。ここではその中から選りすぐった、この時期プラハに来られる方必見の、お勧め展示会をいくつかご案内いたしましょう。

レンブラント:ある人物の肖像 

最も有名なオランダ人画家レンブラント・ファン・レイン没後、既に350年が経ちました。プラハ国立美術館はこれを記念して、ケルンのヴァルラフ・リヒャルツ美術館と共に、レンブラント展を準備中です。同展覧会は、9月25日開幕、2021年1月31日まで開催されます。この展覧会は知識と学問の探求、黙想と精通といったテーマを、レンブラントの初期の作品から、アムステルダムで徐々に注目を集めていった1630年代の作品、そしてその弟子や同時代人の作品、あるいはレンブラント作品の現代の解釈など様々な観点から考察していくことを目的としたものとなっています。ここでは同展覧会の中心的存在である、プラハ国立美術館所蔵の「読書する学者」(1634年)をはじめとして、ニューヨークのメトロポリタン美術館、アントワープ王立美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、ウィーンのアルベルティーナ美術館、そして個人のコレクターから借り受けた超一流の芸術作品の数々をご観賞いただけます。
 

太陽の王たち 

国立博物館旧館では2021年2月7日まで、「太陽の国たち」と名付けられた展覧会が開催されています。これはエジプトのアブシールにおけるチェコ人考古学者による最大の発見をテーマとした特別展覧会で、ここではカイロ博物館、ギーザの大エジプト博物館、そしてドイツ国内の様々な博物館から借り受けた貴重な発掘物をご覧いただけます。またプラハ・カレル大学の考古学チームのアブシールにおける発掘で収めた成功により、国立博物館に分与された品々も見学することができます。展示物の中には、例えばアブシールに埋葬された4人のファラオの中の一人、ネフェルエフラーの貴重な彫像、あるいはシェレネブティ王女と書記ネフェルの墓から発見された一連の彫像など、紀元前3000~1000年の宝物も含まれています。では「太陽の王たち」という展示会の名称は、一体どこから来ているのでしょうか。この答えは、展覧会会場で是非貴方ご自身で見つけ出してみてください。エジプトの歴史、考古学に関心のない方にも、この展覧会は絶対お勧めです!

iムハ、アルフォンス・ムハとパスタ・オネル:エルーシブ・フュージョン

アール・ヌーヴォー、アルフォンス・ムハ(ミュシャ)の作品がお好きな方には、9月に是非プラハへお越しください。この月には、ムハをテーマとした展覧会が2つ開催されます。その1つは、カムパ博物館で10月25日まで開催されている「エルーシブ・フュージョン」展。ここではアール・ヌーヴォー芸術家アルフォンス・ムハと、ストリート・アーティスト、パスタ・オネルの共通点を紹介しています。もう1つの展覧会は市民会館で開催されている「iムハ」展で、ここではその名が示唆する通り、数々の有名なポスターをその一部が動くデジタルのモーション加工バージョンが世界初公開されます。高度なデジタル技術により、絵の登場人物や、スラヴ叙事詩内の情景、あるいはアルフォンス・ムハ自身がリアルに動く様をお楽しみいただけます。「iムハ」展は、2023年2月28日までロングラン開催されています。

「マリオネットの世界」創設100周年 

今年は、プラハ旧市街・ジャテッツ通りの劇場「マリオネットの世界」の創設100周年に当たります。これに関連して、旧市街広場の近くに立つ金の指輪の家を会場に、プラハ市立博物館主催の記念展覧会が開催されます(2021年1月31日まで)。ここにはユニークな昔の操り人形、舞台道具、装飾、衣装(そうです、マリオネットにも専用のガードローブが存在するのです!)などが展示されています。ここではまた、マリオネットに一生を捧げた人々の努力の結晶もご覧いただけます。貴方もこの機会に是非マリオネットの世界を検証して、ご自分の芸術観を広げてみてください。この部門が決して子供向けのおとぎ話のためだけに存在するのではないということを、ご理解いただけることと思います。例えば、チェコはマリオネット大国で、その民俗人形劇はユネスコ世界文化遺産に登録されているという事実、貴方はご存知でしたか?

ミクラーシュ・メデック ― いばらの裸体 

ミクラーシュ・メデックは、チェコの第二次世界大戦後、すなわち20世紀後半の芸術シーンを代表する画家のひとりです。国立美術館はこのたび、メデック展実現を決定、9月11日から2021年1月10日までの期間、聖アネシュカ修道院、ヴァルドシュテイン乗馬場、そして部分的に見本市宮殿をも会場にして、開催する運びとなりました。これは、ミクラーシュ・メデックを、世界的な画家としてだけではなく、その人生観や見解で同年代の多くの芸術家に影響を与えた人物として紹介することを目的としたもので、メデック作品のサイズを考慮すると、最大級の規模の展覧会になると予想される一方で、通常展覧会にはなかなか出品されないような作品をも紹介する機会となっています。

仏陀の近影 

プラハ国立美術館チューリッヒのリートベルク美術館は、2020年11月6日~2021年3月7日までの期間、そのコレクションの中から一流の仏教美術作品を厳選して展示します。「仏陀の近影」と名付けられたこの展覧会は、仏教美術の歴史をその創始期から紹介する、チェコ国内初の試みとなります。展示品は、紀元2世紀、3世紀から20世紀まであらゆる時代を網羅しており、プラハとチューリッヒの両美術館のコレクションの中から選ばれた、特に優れた、あるいは歴史的意義の高い彫刻、絵画などの作品から成っています。この展覧会では、芸術作品そのものはもちろん、オーディオビジュアルあるいはインタラクティブ要素をも介して、仏教芸術の各部門が紹介され、アジア文化における仏教の発祥、そして拡大について解説されます。展覧会会場には、旧市街広場のキンスキー宮殿が選ばれています。

アドルフ・ロース 

プラハ市立博物館が2020年末~2021年期にお届けるするメイン・イベントは、同館が国立技術博物館と共同で準備している「国際人アドルフ・ロース」と題した展覧会です。2020年12月から2021年8月まで開催されるこの展覧会では、ロースの作品がチェコ国内のみならず、欧州内の他の地域でも見られることが強調されています。また国立技術博物館による、いわゆるアドルフ・ロースの最後の家の再現も計画されていますが、これはフランチシェク・ミュラーがその娘ミラダのために、ロースに設計を依頼した木造の邸宅です。また同じロースを扱った展覧会としては、上記展示会より少し早い時期(2021年1月31日まで)に「アドルフ・ロース 天才の反復」と題した展覧会がスタディ&ドキュメンテーション・センター「ノルベルトフ」で開催されます。ここでは空間、素材、設備、あるいは光などを巧みに操るアドルフ・ロースの建築学的遺産に焦点が当てられています。さらにロースに関心のある方は、プラハ・ストシェショヴィツェ地区のミュラー邸見学コースにも是非参加してみてください。